Jeff Geerlingさんの記事は、Bambu Labの3Dプリンターをめぐる不満の延長線上にあります。
彼はもともと、Bambu Labのプリンターをまったく使っていないわけではなく、P1Sを今も使っている と書いています。ただし、Bambu Labがクラウド接続前提の仕様を強めてきたので、彼は次のような対策を取ったそうです。
ここ、かなり象徴的です。
つまり彼は「便利さより、自分の所有物を自分でコントロールしたい」と考えているわけです。正直、これはかなり筋の通った姿勢だと思います。機械を買ったのに、実質的に会社の都合で使い方を縛られるのは、やっぱりモヤっとしますよね。
ここは少し整理するとわかりやすいです。
いずれも AGPLv3 というオープンソースライセンスで公開されています。
ざっくり言うと、これは「ソフトの中身を公開し、派生物もその自由を引き継ぎやすくする」ためのルールです。
ただし、Bambu Labの仕組みには最初からややクセがあって、印刷データがクラウドを通る構成 になっているため、会社側がユーザーの印刷内容を見られる形になりやすい。
これを嫌う人は、ローカルで完結する運用をしたくなるわけです。著者はまさにそのタイプですし、私はこの気持ち、かなりよくわかります。
今回の火種は、OrcaSlicer-bambulab というフォーク(派生版)です。
このフォークは、Bambu Labのクラウドを通さずに、Bambuプリンターの機能を使えるようにするものでした。
ここでBambu Labは強く反応し、開発者に対して法的措置をちらつかせます。
しかも、その際に 「なりすまし攻撃(impersonation attack)」のような危険行為だ といった主張まで出した、と記事は伝えています。
開発者側はこれに反発し、
「自分は危険な人物として公開されているが、実際には upstream のコードをそのまま使っているだけだ」
という趣旨の反論をしています。
これはかなり大きい話です。
なぜなら、オープンソースでは「上流のコードを使って改良する」のは、別に変なことではないからです。むしろ、それが文化の中心です。
そこに対して企業が強い立場から「やめろ」と圧をかけると、オープンソースの前提そのもの が揺らぎます。
Jeff Geerlingさんが特に問題視しているのは、Bambu Labが
ように見える、という点です。
著者はこれを、「open source social contract(オープンソースの社会的な暗黙の約束)」の悪用 だと言っています。
要するに、オープンソースは「みんなで自由に使える代わりに、企業もコミュニティも互いを尊重する」という、明文化されない信頼関係で成り立っている。
ところがBambu Labは、その信頼を利用しつつ、都合が悪くなると一方的に締め付けているように見える、という批判です。
これは面白い視点です。
単に「この会社が嫌い」という話ではなく、オープンソースを土台にした商売のやり方そのもの を問うているからです。
Bambu Labは、問題のフォークについて
falsified identity metadata
偽の識別情報をネットワーク通信に入れていた
と説明しています。
でも著者は、これを見て「本当にそれが最大の問題なのか?」と疑問を投げています。
たしかに、もしサーバー側が「公式クライアントっぽいUser-Agent文字列」だけを頼りに守られているなら、セキュリティとしては心もとないです。
User-Agent というのは、通信するときに「私はこういうアプリです」と名乗る情報のことですが、これは基本的に“自己申告”なので、完全な証明にはなりません。
著者の主張はこうです。
この指摘はかなり痛いと思います。
技術企業って、ときどき「ユーザーの回避策を潰す」方向にばかり力を入れて、肝心の本体はあまり改善しないことがあります。正直、あるあるです。
著者は、Bambu Labの姿勢には皮肉もあると見ています。
たとえば、Bambu Lab自身も過去に、他社のサーバーにテレメトリーが飛ぶような問題 を起こしたことがあるそうです。
つまり、他人のふるまいを強く批判する一方で、自分たちも似たような問題を抱えていた時期があるわけです。
こういう話は、外から見るとかなり冷めます。
「それを言うなら、まず自社の足元を見てほしい」と感じる人は多いのではないでしょうか。
この話は、単なる3Dプリンター界隈の揉め事ではありません。
もっと大きく言うと、
というテーマにつながっています。
個人的には、ここがいちばん重要だと思います。
今は3Dプリンターの話ですが、これが家電、ルーター、スマートスピーカー、車に広がったらどうなるか。
「便利だからクラウドでいいよね」が進みすぎると、気づいたら買ったはずの物が、実は会社の支配下にある という世界になりかねません。
著者の最後のメッセージは、かなりストレートです。
これは強い言い方ですが、消費者としてはわりと現実的でもあります。
企業は売れなければ方針を考え直すことがありますからね。
また、著者は支援の動きとして、Louis Rossmann が「法的争いを支えるために1万ドル出す」と言っていたことにも触れています。
ただし、争いを続けること自体が得策かどうかは別問題で、著者は「そもそもBambu Labと戦う土俵に戻るより、別メーカーに乗り換える方がいいのでは」と見ています。
このブログ記事は、Bambu Labの法的圧力をめぐる単なるゴシップではなく、
「オープンソースを使う企業の責任」 と 「購入後の所有権」 を真正面から問う内容です。
私の感想としては、Bambu Labがここまで強硬なのは、かなり印象が悪いです。
たとえ技術的・法的に一理ある主張があったとしても、やり方が“コミュニティに敵対的”に見えた瞬間、信頼は一気に削れます。
オープンソースの世界では、コードだけでなく態度も重要なんですよね。そこを雑に扱うと、ユーザーはちゃんと見ています。