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GPUのNVENCを“PCIeシリコン”として使う発想が面白い――TorchNVEncCompressの試みを読む

キーポイント

本文

今回紹介するのは、Redditの r/MachineLearning に投稿された「torchnvenccompress」という話題です。
タイトルだけ見ると少し取っつきにくいですが、要するにNVIDIA GPUの中にあるNVENCという圧縮専用機能を、PyTorch系の文脈で使おうとしている、という話だと受け取れます。

まずNVENCから。
これはNVIDIA GPUに搭載されている動画圧縮のための専用ハードウェアです。
普通、データを圧縮するにはCPUが頑張るか、GPUで計算を書くか、というイメージがあると思います。
でもNVENCは「動画を速く軽く圧縮するための回路」が最初からGPUに入っているので、うまく使えばかなり効率よく処理できます。

ここで面白いのが、NVENCを「動画を書き出す機能」としてだけ見ない発想です。
投稿タイトルには「NVENC silicon as a PCIe」というニュアンスが含まれていて、私はここがかなり刺さりました。
つまり、GPUの中にある圧縮用シリコンを、​PCIe接続の外部デバイスみたいに見立てて使うという考え方です。
PCIeは、パソコンの中で高速な機器をつなぐための通信規格のことですね。
ざっくり言うと、「GPUの内部機能を、別部品っぽく扱う」わけです。発想がちょっと発明っぽくて楽しいです。

こういうアプローチの良さは、たぶん汎用計算と専用処理を分けられるところにあります。
GPUは何でもできる反面、何でもGPUでやると設計が重くなりがちです。
一方で、圧縮のように“形が決まっている処理”は、専用ハードウェアに任せたほうが速いことが多い。
なので、もし torchnvenccompress がその橋渡しをうまくやっているなら、かなり実用的だと思います。

特に機械学習の周辺では、データを保存したり送ったりする場面が多いので、圧縮は地味だけど重要です。
学習そのものはGPUでやっていても、入力データや中間結果のやりとりは意外とボトルネックになります。
そこをNVENCみたいな専用機能で軽くできるなら、​速さ、電力効率、コストの面でかなり嬉しいはずです。
このへんは「派手さはないけど効く」タイプの技術で、個人的にはすごく好きです。

ただし、ここは注意点もあります。
今回の元記事本文は、実際には Reddit - Please wait for verification とだけ表示されていて、こちらで読める詳細情報はかなり限られています。
なので、​プロジェクトの具体的な実装や性能、用途の詳細までは断定できません
あくまでタイトルと投稿先から読み取れる範囲での紹介になります。

それでも、こういう「GPUをただの計算機ではなく、専用機能の集合体として使い切る」発想はかなり面白いです。
最近のハードウェアは、見た目以上にいろんな機能を抱えています。
その隠れた能力を掘り起こして、ソフトウェアから上手く触れるようにする。
この手の試みは、地味だけど未来っぽい。私はかなり好みです。

もし torchnvenccompress が本当にPyTorch周辺でNVENCを扱いやすくするものなら、
「モデル学習の前後処理」「データ転送の圧縮」「動画や画像を扱うパイプラインの高速化」など、いろいろ応用が考えられます。
もちろん、NVENCは万能ではないので、圧縮したいデータの種類やワークフローによっては向き不向きがあるはずです。
でも、​専用ハードウェアを“見える化”して活用するという方向性は、機械学習の実運用にかなり効いてくるのではないかと思います。


参考: Reddit - Please wait for verification

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