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FivetranのCPOが語る「閉じたデータ基盤は、AIエージェント時代に生き残れない」

記事のキーポイント

何が起きているのか

The New Stackの記事は、FivetranのCPO(Chief Product Officer)である Anjan Kundavaram氏 の見方を軸に、​AI agent時代にデータ基盤の設計思想が変わりつつあることを取り上げています。

AI agentというのは、ざっくり言うと人の指示を受けて、複数のツールやデータをまたいで自律的に作業するAIです。
たとえば「売上データを見て、異常値を見つけて、レポートを作る」みたいな仕事を、人の代わりにある程度こなします。

ここで問題になるのが、こうしたagentは1回だけデータを見るわけではないという点です。
何度もデータを読み、更新し、別のシステムへ渡し、また確認する。つまり、​データへのアクセス回数が爆増しやすいんですね。

このとき、もしデータ基盤が

という構造だと、AIの便利さより先に請求書の痛みが目立ってしまう。
この記事は、その“隠れたコストの罠”を指摘しているわけです。

「closed data stack」がなぜ厄介なのか

「closed data stack」は日本語にすると少し硬いですが、要は閉じたデータ基盤です。
データ収集、保存、加工、分析までを、ひとつのベンダーや閉じた製品群に強く依存している状態を指します。

こういう構成は、最初は楽です。
導入しやすいし、つなぎ込みも少なくて済む。
でも、成長すると話が変わります。

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AI agentの時代は、データを

みたいなことが日常茶飯事になります。
すると、​**“データを使うたびにお金がかかる”設計**は、じわじわ効いてくるんです。

ここ、かなり面白いところです。
従来は「便利さ」や「運用の楽さ」が閉じた基盤の魅力でした。
でもAI agentが入ると、​大量・反復・自動が前提になるので、閉じた設計の弱点が一気に露出する。
まるで、普段は気づかなかった家の狭さが、急に大人数の来客でバレるみたいな感じです。

ベンダーが「締め付け」を強めるのは逆効果

記事の説明によると、Kundavaram氏は、こうしたコスト圧力に対してベンダーが利用制限を強めるのは、賢い対処ではないと見ています。

これはかなり重要です。
コストが上がるからといって、

といった方向に進むと、短期的には収益を守れても、長期的には顧客が離れやすい。
AI agent時代は特に、​**“自由に使えること”そのものが価値**になるので、締め付けは逆風になりやすいでしょう。

個人的には、ここはSaaS全般にも当てはまる話だと思います。
昔は「囲い込み」が強い武器でしたが、AIが普及すると、囲い込みは摩擦とコストの象徴にもなりうる。
潮目が変わってきた感じがあります。

じゃあ、どういう基盤が強いのか

この記事の流れから読み取れるのは、​開かれたデータ基盤の重要性です。

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ここでいう「開かれた」とは、単にオープンソースという意味だけではありません。
もっと広く、

ということです。

AI agentは、ひとつの製品の中だけで完結しにくい存在です。
データベース、warehouse、BI、workflow、LLM、監査ログなど、いろんな場所を行ったり来たりする。
だからこそ、​データを自由に動かせる設計が強い。

これは地味ですが、かなり大きな変化です。
AIの議論ってつい「どのモデルが強いか」に寄りがちですが、実務ではむしろデータの流れ方が勝負になりやすい。
モデルが賢くても、データが詰まっていたら何も始まらないですからね。

この話が「今」重要な理由

AI agentは、まだ派手なデモの印象が強いかもしれません。
でも、記事が指摘するのはもっと現実的な話です。
agentが普及すると、AI利用の費用は“推論コスト”だけでは済まなくなるということ。

つまり、

がまとめて効いてくる。
しかもagentは自動で動くので、気がついたら利用量が増えている、ということが起きやすい。

ここが経営的には厄介です。
人間が使うなら「今日はちょっと多かったね」で済むかもしれない。
でもagentは止まらない。
だから、​**“便利だから使う”が、そのまま“請求が増える”に直結する**わけです。

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私の感想:AI時代は「知能」より「配線」が勝負かもしれない

この記事を読んで、かなり納得感がありました。
AIの話はどうしても華やかですが、実際に企業で使うとなると、最後はデータ基盤の配線がものを言うと思います。

どれだけ賢いagentでも、

が整っていないと、実運用では辛い。

逆に言えば、AI時代に強い企業は、派手なデモを作る会社というより、​データを素直に流せる会社なのかもしれません。
地味だけど、たぶんすごく大事です。

まとめ

FivetranのCPOが語るポイントはシンプルです。
AI agentの普及は、閉じたデータ基盤の“見えにくいコスト”を表に出してしまう。​
だから、これからの時代に必要なのは締め付けではなく、​開放性と相互運用性だという話でした。

AIブームの裏で、こういう“配線と請求書”の現実が前に出てくるのは、とても今っぽいです。
そしてたぶん、ここをちゃんと見ている企業ほど、次の波で強いのではないかと思います。


参考: Fivetran's CPO: Closed data stacks won't survive the agent era

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